目標設定について語られるとき、よく聞く一般論がある。

「目標は具体的であるほど良い」

数値があり、期限があり、達成条件が明確であること。
SMART目標やOKRのようなフレームワークはこの原則に立って設計されている。
実際、それが機能する人も多いだろう。

そもそも向かう先を定めることは重要だし、指針があるからこそ力を集中できる。

ただ、ここ数年ずっと感じていた違和感がある。

具体的にすればするほど、なぜか目標が重くなり、運用できなくなる感覚だ。


具体性が高すぎる目標が苦しくなるとき

目標を立てたはずなのに常に頭の片隅に居座り続ける。
達成できていないこと自体がストレスになり、考えるたびに疲れる。

  • 期限が近づくと気が重くなる
  • 少し逸れるだけで「失敗した」感じが出る
  • 現実に合わせて調整すると、裏切っているような気分になる

こういう経験がある人は少なくないと思う。

例えば、昨年私は健康に対する目標で2つの目標を立てた。

  • 一人の時間を10分取る
  • 毎朝サイクリングを行う

というような目標だ。

が、この目標は達成できなかった。

実際にはまとまった一人時間は取りづらく、 朝のサイクリングも生活リズムと合わなかった。

一方で、時間が詰まってきたら短く散歩することによって自分の時間を回復する。
運動として、1日8,000歩歩くというような目標は達成できた。

具体性が高すぎたがゆえに一年の目標にしては具体度が高すぎたのだとおもう。

具体性が高すぎる目標はそれ自体が常駐タスクになってしまう。
それ故にこの目標は人を縛る力非常に強いのだけれども、それが故に自分をそこから回避させてしまうようなことも起きる。

特に、制約の多い状況(仕事・家族・体調など)では、「計画を守ること」と「現実に合わせて動くこと」が衝突しやすい。


重要なのは目標を"運用できる"ことだろう

問題は「目標」をSMARTにそって立てることそのものではなく、目標によって力を集中できること。

それによってより良い状態に変化し続けられること。
なりたい自分に近づけること。

多分、こっちのほうが重要度が高いだろう。

だから、年間の目標はもっと抽象度を上げてもよいのではないか?と思う。
さもなくば、年の途中にたくさんの目標変更が発生してしまい、運用がとても難しくなる。

我々には仕事も家庭も含めた生活もあるのだ。

だから今年は目標の抽象を指針というレベルまで上げることと、
行動目標を打ち手候補という形で抽象度を下げ、具体性をこちらに持たせることにした。


『軽やかな目標設定』:抽象度の高い指針と、具体的な行動トリガー

今年の目標を一部、抜粋してみる。

1. 抽象度の高い指針を置く

たとえばこんなものだ。

  • 人生の主導権を取り戻す
  • 選びなおす
  • 考えたことを再利用可能にする

これらは測定できないし、達成判定もない。
ただし、判断の基準としては十分に機能する。

「これは今、この指針に沿っているだろうか?」
そう問い直すための軸になる。

今年の目標ぐらいの抽象度なこの程度でいいだろう。
ついでに言うなら、自分自身の今年のテーマなので他人から見て十分な客観性も不要だ。
美しくもないが、自分の心に響くことのほうが重要度が高い。

2. 行動は、かなり具体的にする

一方で、日々の行動は抽象化しない。

  • 同じ説明を2回したら、1行メモに残す
  • 迷ったら、いったん歩く
  • 見てくれる人がいるなら、任せる

ここには理想も、長期計画も置かない。
状態に反応して起動するだけの、小さな行動にする。

この行動目標は客観度が高いメモのようなものだ。

3. 見直す前提を、最初から組み込む

重要なのは、途中で見直すことを失敗扱いしない設計にすることだ。

  • 四半期に一度、指針が機能しているかを見る
  • 合っていなければ、行動だけを入れ替える
  • 指針そのものは、基本的に年単位で扱う

こうすると、調整すること自体が自然な運用になる。
この運用にすることで行動目標も失敗前提で打ち手ぐらいの立ち位置にして、あとから追加も修正もするということも可能だ。
タイムスパンのコントロールもできる。


「軽やかな目標設定」は、目標を軽視しているわけではない

ちなみにだが、このやり方は一般には「ゆるい」「曖昧」「甘い」と見られるだろう。
それも一定理解できる。

でも、一方でやはり、一般的な目標設定は運用が重たすぎる。
その上、心が踊らない。

見たときに、『あー、これで少し良い方向に近づける』とホッとしてペンを置くような気持ちにはなれないのだ。

具体性を上げすぎて動けなくなるくらいなら、少し抽象度を上げて、長く使えるようにしたほうがいい。

特に1年を通して使うようなそういう目標設定にはこういう形の方が運用しやすいだろう。


目標が続かなかった人へ

もしこれまで、

  • 目標を立てても続かなかった
  • 達成できず、自己嫌悪になった
  • 計画を立てること自体がしんどくなった

そんな経験があるなら、それはきっとあなたに合った目標設定ではなかっただけなのだと思う。

決して意志が弱いからではない。

目標は重くする必要はないとおもう。
向かう方向を示しつつ、現実と自分の特性に合わせて使える形にすればいい。

目標も人によって使いやすい形があり、多様な有効な型があるはずだと思う。

「目標は、具体的であるほど良いのか?」